“写すだけ勉強”から卒業しよう――覚える→解く→直すが成績を変える

「教科書をすべて写す」がうまくいかない理由
ある保護者の方から、こんな相談を受けました。
「うちの子、教科書を全部ノートに写して、赤シート用のノートを作って覚えてから、
問題集に取り組んでいるんですが、なかなか成績が上がらないんです…」
一見とてもまじめな勉強法に見えますが、実はこうしたやり方は珍しくありません。
几帳面で努力家の子ほど、「まずは全部きれいにまとめたい」「完璧に覚えてから進みたい」と考えがち。
ところが、この“完璧主義の努力”は、点数に直結しにくいのが現実です。
私はその保護者の方に、こうお伝えしました。
「教科書を“すべて”写すのはやめましょう。社会のような暗記科目は、“覚えて”初めて点数になります。
写すだけでは点にはなりません。」
もちろん、要点を整理する目的で「必要な部分だけをまとめる」こと自体は有効です。
ただし「全部書くこと」が目的化すると、肝心の“覚える時間”が削られてしまいます。
暗記教科の基本形はシンプル
成績につながる王道の流れは次の二つです。
- 教科書の内容を覚える
- 問題集を解く
① 教科書の内容を覚える
「読む」「重要語句に線を引く」「暗記ペン+赤シートで隠す」「声に出す」「短く書き出す」――方法は何でもOK。
大切なのは、“考えながら覚える”ことです。
単なる書き写しは、手は動いても脳が休んだまま。時間の割に定着しません。
- 取捨選択する:全部ではなく「出やすい」「あやしい」部分を優先。
- 能動化する:音読や自問自答(「これは何時代?」「誰がやった?」)で記憶のフックを増やす。
- 見返しやすく:太字・矢印・欄外メモで「どこが大事か」が一目で分かるノートに。
② 問題集を解く
覚えた内容を「使える形」にする工程です。
①ができていれば、スムーズに解けて小さな成功体験が積み上がります。
分からなかった問題は、テストまでに必ず復習して埋める。
ここで「できない」を「できた」に変える循環が生まれます。
点数に直結する“黄金サイクル”
- 覚える:要点をしぼって能動的に。
- 解く:アウトプットで穴を可視化。
- 直す:間違いをメモ化・再暗記・翌日もう一度解く。
このサイクルを回すほど、覚えた知識が「取り出せる知識」に変わります。
時間をかけるべきは「清書」ではなく、このサイクルです。
タイプ別:時間配分のコツ
- 基礎固め期(新中1/伸び悩み):①を厚め(6)→②(4)。まずは「覚えてから解く」の型づくり。
- 得点伸長期:①(4)→②(6)。演習量を増やし、「直す」の精度を上げる。
- 直前期:頻出範囲に絞って①(3)→②(7)。過去問形式で“時間内に取る練習”。
「写す」を活かすミニ活用法
- 30文字要約ノート:段落ごとに「要は○○」。短く書くほど思考が動き、定着する。
- “ここだけ暗記”ページ:自分がミスした部分だけを1ページにまとめ、寝る前に見直す。
- 1分確認テスト:ノートを閉じて、頭の中で「今日は○○を覚えた」と言えるかチェック。
努力の方向を正しく整える
「教科書を全部写す」タイプの子は、決してサボっているわけではありません。
むしろ、誰よりも努力しています。
ただ、残念なのは“がんばり方の方向”が少しずれているということ。
成績を上げるために必要なのは、「どれだけ長く勉強したか」ではなく、
「どれだけ覚え、使い、直せたか」。
写す時間を減らし、頭を使う時間を増やすこと。
それが「効率のいい努力」への第一歩になります。
基本に戻る勇気を
勉強のやり方に正解は一つではありません。
でも、社会・理科・英単語など「覚える系」の教科では、
このシンプルな2ステップが最も確実です。
だからこそ、一度立ち止まって「いまのやり方、結果につながってる?」と見直すことが大切です。
勉強法を変えるのは勇気がいりますが、方法を間違えたまま努力を続ける方が、ずっともったいない。
特に新中1や、成績を伸ばしたいけど何から始めればいいかわからない子には、
この「覚える→解く→直す」という基本形をしっかり身につけてほしいと思います。
どんなに優秀な生徒でも、最初はみんなこの形から始めています。
特別な才能も、裏ワザもいりません。
正しい方向でコツコツ積み重ねる。
それが一番の近道です。

























