左手で文字を書く練習は効果あるのか?実体験からわかったこと

脳科学のテレビ番組を見て挑戦した「左手チャレンジ」

ある日のことだ。テレビで脳科学の特集が放送されていた。タイトルはたしか「脳が若返る!驚きの最新メソッド」みたいなものだったと思う。その中で、ある専門家がこう紹介していた。

「普段と逆の手を使って文字を書くと、脳が活性化されて頭が良くなるんです!」

妙に説得力があった。実際、右利きなら左手、左利きなら右手で字を書く練習をすると、普段使わない脳の部位が刺激されるというのだ。ナレーターの声も真剣そのもの。まるでこれをやらない人は損をしているかのような雰囲気だった。

当然、私はその場で「よし、やってみよう!」と決意した。これで私も明日から頭が冴えわたり、勉強も仕事も効率アップ間違いなしだろう、とワクワクしながらノートとペンを取り出したのだった。

左手で書くという難行苦行

いざ挑戦してみると、これがまあ難しい。文字というより、もはやミミズが這いずり回っているような線がノートに並んでいく。まっすぐに線を引くことさえ難しく、文字を枠に収めるなんて芸当は到底できない。ノートはたちまち「読み返したくないノート」と化していった。

何度か挑戦はしたが、3日も経つとモチベーションは下がり、1週間後には完全に挫折。左手チャレンジは静かに幕を閉じたのだった。

学生時代の左手書き挑戦

そういえば、これが初めての左手挑戦ではなかった。学生の頃にも、実は同じようなことを試みたことがある。そのときの理由は「脳科学」などという高尚なものではなく、もっとシンプルな動機だった。

私は昔から字が汚かった。ノートもプリントも、テストの答案も、我ながら読みづらい字だった。そんな自分に嫌気がさし、ある日こう考えた。

「右手がダメなんだ。だったら左手で練習すればいいじゃないか!」

今思えば、なかなか斬新な発想である。右手に見切りをつけ、左手に新たな可能性を託す――まるで新戦力の若手にチャンスを与える監督のような気持ちだった。

まさかの驚きの結果

勢いよく始めた左手の書き取り練習。最初はもちろん苦戦したが、若さゆえの根気で1週間ほど続けてみた。すると、驚くべき成果が現れた。

…が、良い意味での驚きではなかった。

なんと、左手で書いた字も右手とそっくりに汚かったのだ。

線のブレや形の不安定さは多少違えど、全体的な雰囲気はまさに私の字そのもの。もし筆跡鑑定に出したら、間違いなく「同一人物の筆跡です」と断定されるだろう。

字の汚さは手ではなく「脳」だった!?

ここで私は悟った。どうやら、字の汚さは利き手の問題ではなく、そもそもの筆跡の癖や脳の運動指令の問題だったらしい。つまり、どの手で書こうが「私の脳が描く字」は変わらないのだ。

もし左手でこのまま続けても、おそらく汚いままの字に磨きがかかっていくだけだろう。汚さの成長に貴重な時間を費やすわけにはいかない。私は潔く左手チャレンジを断念することにした。

結局は「右手一本集中」が正解だった

今思えば、遠回りだったのかもしれない。けれど、この経験が教えてくれたことはひとつ。

「字をきれいにしたければ、右手一本に集中して努力するのが一番の近道だ。」

利き手で正しい字形を意識し、丁寧に、少しずつ改善していく。それが結局、一番確実な方法だったのだ。魔法のような裏技はなかった。

おわりに:失敗もまた、楽しい経験

こうして私の左手チャレンジは二度も失敗に終わったが、今となってはちょっとした笑い話だ。もしあの日テレビ番組を見ていなければ、思い出すこともなかったかもしれない。

人間、失敗を繰り返しながら学んでいくのだなあと、改めて実感している。字は今も劇的に美しくはないけれど、まあ読めるだけマシだと思っている。


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白石泰宏プロフィール


白石泰宏(しらいしやすひろ)1980年生まれ。国立熊本電波高専電子工学科卒業後、航空自衛隊に勤務。退官後、海外に15か月の留学。家庭教師、大手・個人塾講師を計3校経てひまわり教室を開校
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